契約シンデレラ

プロローグ

「「グッドモーニング」」

お客さんが入って来ると、スタッフが頭を下げて挨拶をする。

「おはようございます」
私も日本人客を見つけ、足を止めて会釈をした。

ここはマレーシアのリゾート地に立つ5つ星ホテル。
街中ではないが、空港も近くにあり交通の便はいいところだ。
もちろんお値段はそれなりに張るけれど、人が少ない分のんびりできてセレブにも人気の場所。実際私も都会の喧騒から逃げ出すためにここへやって来た。
ただし、私の場合はお客さんとしてではなくて、

「晶、奥のテーブルを片付けてくれるか?」
「はい。わかりました」

マネージャーに言われテーブルのセッティングをする私は、このホテルのラウンジで働く日本人スタッフ。
名前は星野晶(ほしのあきら)。23歳。身長155センチと小柄で顔も童顔のために時々子供と間違えられるけれど、れっきとした大人だ。
海外とはいえこの外見のお陰で街を歩いていてもナンパされることもないのが、かえって気楽で気に入っている。
そんな私も日本を出てマレーシアにやって来て2か月。ここの生活にも大分慣れた。
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