契約シンデレラ
「それで、財布もスマホもなくしたのか?」
「ええ」

とりあえずどこかに入ろうと近くのカフェに案内され、男性と向かい合って座った窓際の席で外を行き交う現地の人たちを見ながら、私は今日の出来事を説明した。

「あまりにも不用心だな」
「・・・はい」
それを言われれば何も言えない。

「そもそも、君に水商売の経験があるのか?」
「いえ、でも・・・」

仕事をなめているつもりは無いけれど、接客業って意味ではホテルの仕事と変わらないはずと思っている。
異国の地で財布をスマホもなくしたからにはどんなことでもするしかない。

「仕事をなめない方がいい。ホテルの仕事でもホステスでも、働いてお金をもらうからにはプロでなくていけないはずだ」
「それは・・・」

確かに男性の言うことは正論だ。
いい加減な気持ちで就いてもいい仕事なんてない。
それでも、

「いくら頭にきたからと言って客にコーヒーをかけるような人間は客商売向きだとは思わないがね」
「えっ」
私は驚いて顔を上げた。

男性が言いたいの先日のホテルでのことだろう。
あの場に男性がいたかどうかの記憶はないけれど、もしかしたら遠くの方からでも見ていたのかもしれない。
そして、あの場での私の行動は間違っていたと言いたいのだろう。

「他にも方法はあったと思うが?」
「・・・すみません」

なぜだろう、私の口から素直に反省の言葉が出てきた。
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