契約シンデレラ
昨日の晩、晶とうちの産業医である海田先生が一緒にいたことを知って正直面白くなかった。
晶と俺は契約によって結ばれた利害関係なのだとわかっていながらも、無性に腹が立った。
そして何よりも、海田先生が原因で涙する晶にイライラした。
その腹いせでもないが、いつものように一足先に出勤しようとする晶を強引に引き留めて迎えの車に乗り込んだ。

「あの・・・その先の信号で止めていただけますか？」
「その必要はない」
「しかし、このまま一緒に出勤するわけには・・・」
「大丈夫だ、問題いない」
「社長・・・」

途中の駅やコンビニで降ろしてくれと言い続ける晶に、俺は首を振り続けた。
もちろん二人で一緒に出勤すれば人目にもつくだろうし、そのことを晶が心配するのもわからなくもない。しかし、俺は晶と共に社用車で出勤することにした。
それは、普段からどちらかというと淡白で人にも物にも執着心の薄い俺には珍しいことだった。

「おはようございます」
「ああ、おはよう」

車が社に到着し地下の重役用駐車場に入ると、幹人がドアを開けてくれた。

「おはようございます課長」
車から降りた晶が、慌てたように走ってくる。

「おはよう、星野さん」

いつも通り冷静に挨拶をする幹人だが、一瞬目が泳いだのを俺は見逃さなかった。
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