契約シンデレラ
「あの、私は階段で参りますので」

重役用のエレベーターに乗り込むことを避けたい晶が駆け出そうとしたところで、俺が腕をつかんだ。

「何を言っているんだ、一緒に行けばいいだろう」
「しかし・・・」

晶の心配がわからないわけではない。
このまま社内へ入れば、会社の人間に同居の事実が知れることになるかもしれない。そうすれば、当然母さんの耳にも入ることになるだろう。
母さんは元財閥のお嬢様だから俺なんかよりよっぽど太いコネと情報網を持っているし、少し調べれば俺と晶が一緒に住んでいるのもすぐにわかることだろう。
そうなれば色々と面倒なこともあるのだが、コソコソと隠れるように暮らすのが俺はどうしても嫌だった。
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