契約シンデレラ
「進みませんね」

その後、午後の予定のための資料を持って来た幹人が何か言いたそうにテーブルの上を見ている。

「朝食を食べ過ぎたのかな、あまり食欲がないんだ」

せっかく用意してもらった食事に申し訳ないなと思いながら、やはり途中で手が止まってしまった。

「最近自宅での食事が充実していると思ったのは、彼女のお陰ですか？」
「え？」

確かに、今までコーヒーとトーストくらいしか食べていなかった俺が、朝食をしっかりととるようになったのは晶のお陰だろうと思う。
そのせいか、昼食の食事量が少し落ちたのかもしれない。
でも幹人は、晶と一緒に住んでいるのか？と聞きたいのだろうな。

「プライベートに口を出すつもりはありませんが、公私混同はやめてください」
「わかっている」

いかにも幹人らしい言い草だが、間違ったことを言っていないから文句も言えない。
ただ幹人がこれだけ反応するんだから、海田先生が晶に何を言うのかが気になった。
あまり世間の目を気にしたことはなかったが、俺たちの同居は非常識な行動なのかもしれないと初めて思えた。
そして、こういう場合に傷つくのは俺ではなく晶の方なのだと不安になった。
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