契約シンデレラ
ホテルで感じの悪い男性客にコーヒーをかけた後、当然ラウンジ内は騒然とした。
私はすぐに事務所に連れて行かれ、「お客様は激高していて、支配人が責任をとることになるかもしれない」「ホテルの評判を落とし迷惑をかけることをした」と何度も責められた。
そして、そのまま自宅へ帰された。
その後、数日間の自宅謹慎ののちに依願退職の形になったものの、私としては優香ちゃんを守ったつもりで悪いことをしたとは思っていなかった。
実際男性客の行動は目に余るものだったし、誰かがはっきりと注意すべきだったと今でも思っている。
だから、こんな風に指摘されて、初めて自分の行動が間違っていたのかもしれないと思えた。

「それで、どうするんだ?このままここにいる訳にはいかないんだが?」
「それは・・・」
何か方法があれば初めからホステスのバイトをしようなんて思わなかった。
「電話をかけるなら貸してもいいが?」

確かに、電話を借りて日本にいる知り合いに送金してもらうこともできなくはない。
でも、私にはそんなことを頼める人はいない。

「やはりどこかでバイトを探します。ですから、ここの代金も払えなくてすみません」
「そんなことはいいが、やっぱりホステスをするつもりか?」
「いえ・・・」

もちろん違う仕事を探そうとは思うが、無ければ仕方がない。

ククク。
色々と思いを巡らせている私を見て、男性が急に笑い出した。
< 11 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop