契約シンデレラ
「潔癖症のあの子が一緒に住む人ができたなんて、驚きだわ」
「そうでしょうか？」

きれい好きは間違いないし他人と日用品の共有が苦手なのも知っているが、決して気難しい人ではない。私としては一緒にいて苦痛を感じたこともない。

「付き合っているのよね？」
「それは・・・」

当初の計画では、「親しい友人です」と答えるつもりでいた。
圭史さんとは半年間だけの約束だったから、友達以上恋人未満の関係を装うつもりでいたのだが・・・
さすがに一緒に住んでいると知られたからには、そんな言い訳なんてできそうにもない。

「いいのよ別に。あなたもまだ若いんだから付き合うこと自体に反対するつもりはないわ。でもね、」
そこまで言ってお母様の言葉が止まった。

正直、その先の言葉は大体予想がつく。
大企業の社長である圭史さんと私では身分が違いすぎる。おそらくそんな話だろうし、もちろん私自身もそのことは十分に承知している。

「圭史の結婚はしかるべき家のお嬢さんとと私も主人も思っているの、だからそのつもりでいてもらえるかしら？」

そもそも恋人でもない私が圭史さんとの結婚なんて考えるはずもなく、いつだって身を引く覚悟でいる。
さすがに「そのつもりですので、ご心配には及びません」とは言えなかったけれど、
「はい、大丈夫です」
と私は返事をした。

この時、お母様は付き合うことは反対しないと言ってくださった。
しかし、その言葉は本心ではなかったのだと数日後知ることになった。
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