契約シンデレラ

不甲斐ない父

「それで、どこへ行くんだ?」

ホテルを出てタクシーに乗った時点で圭史さんに尋ねられた。

「近くの駅までお願いします」

さすがにタクシーで大阪まで行くことはできないし、駅から新幹線に乗った方が絶対に早い。
自分勝手に好きなことをして生きている父のためにお金を使うことには抵抗もあるけれど、今は少しでも早く現地に行って状況を確認する方がいいだろう。
場合によっては仕事をお休みすることになるかもしれないし、これ以上圭史さんに迷惑はかけられない。

「どこに行くのかって聞いているんだが?」

色々と頭の中でこれからのスケジュールを考えていた私に向けられた機嫌の悪そうな声。
やはり圭史さんも不愉いそうだ。
まあこの状況で機嫌がいい方がおかしいと思う。

「大阪の警察から病院で保護しているという連絡でしたので、近くの駅で降ろしてください。今から新幹線で向かえば夜には着くと思いますから。今日はせっかくの食事会だったのに、本当にすみま」
「運転手さん、このまま空港へ向かってください」
私の言葉を遮るように、圭史さんが運転席へと声をかける。

え、空港?

「あの、圭史さん?」

「今の時間だと飛行機もあるし、このまま空港に向かった方が速い。チケットは俺が手配するから、晶は心配するな」
「いえ、そんな・・・」

圭史さんの気遣いには感謝しながらも、今まで誰にも助けてもらったことのない私は戸惑ってしまった。
しかし、考えてみれば飛行機で向かった方が速いに決まっている。
ここは素直に圭史さんの言葉に甘えて、空港まで送ってもらおうと考えていたのだが・・・
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