契約シンデレラ
「ですから、それはダメですって」
「何でだよ」
「だから・・・」

私と圭史さんが口論をしているのは空港内にあるVIPラウンジ。
すでにチェックインもすませ搭乗まであと少しの時間なのだが、私たちの会話は平行線のまま。

「俺の方が晶よりも顔が効くし、一緒にいれば何かと役にも立つ。それに、晶一人で行かせるのが心配なんだよ」
「そんな・・・」

私だって子供じゃない。
お金もコネも圭史さんほどは持ってはいないけれど、人並みの対応はできる。
そもそも保護された父さんを迎えに行くのもこれが初めてじゃない。

「心配してくださるのはうれしいのですが、行ってみた様子ではすぐには戻ってこれない可能性もあるんです。もしそうなったら私は仕事を休むしかないけれど、圭史さんはそういうわけにはいきません。ですから」
「大丈夫、俺にだって有給はある」

はあー。
一向にかみ合わない会話に、ついため息が出た。

どんな仕事にも優劣はないと私だって思っている。
それでも現実問題として、私の変わりはいても圭史さんの仕事を変わってできる人はいない。
だから、私のために圭史さんが仕事を休むなんて絶対にダメだ。

「ほら、そろそろ時間だ。行くぞ」
「圭史さん・・・」

いけないとわかっているのに、結局また押し切られてしまった。
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