契約シンデレラ
「どうか、しましたか?」
何か笑われるようなことを、私はしただろうか?

「何で金を貸してほしいって言わないんだ?」
「え?」
言われている意味が分からず、私はポカンとしてしまった。

「スマホと財布を無くして、日本に帰ることもできないんだろ?もっと言うなら今夜の宿だってないはずだ。その状況でなぜ『金を貸してほしい』って言わない?」
「それは・・・」

見ず知らずの、ほぼ初対面の人にお金の無心なんてできるはずがない。
そんなことをするくらいなら、私は公園で野宿でもする。

「とりあえず20万でいいか?」
男性は私の返事を待つこともなく、スマホを取り出しどこかに連絡をとろうとする。

「ちょっと待ってください。困ります、よく知りもしない方からお金をいただくわけにはいきません」
「そんなこと言って今夜からどうするつもりだ?」
「たとえ野宿をしてでも、人様に恵んでもらうわけにはいきません」
「お前・・・」

唖然とした表情で私を見る男性。
それでも私には私の思いがあって、譲る訳にはいかない。

ハハハ。
今度は声をあげて男性が笑い出した。
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