契約シンデレラ
「すみません、お待たせしました」

病状説明から病室に戻ると、なぜか楽しそうに会話をする父さんと圭史さんの姿が目に入った。

「では、フランスにもいらしたんですか?」
「ええ。物価は高いが画家仲間も多くて住みやすいところでした。長いときには半年ほど住んでいたこともありますよ」
「そうですか。僕の母もパリが好きで、子供の頃からよく連れて行かれたものです」
「それは、素敵なお母様ですね」

ハハハと笑いあう二人に違和感しかないが、和やかな空気が流れていることは間違いはない。

「晶、どうだった?」
父さんよりも先に、圭史さんに尋ねられた。

「すぐにでも退院していいそうです」
「そうか、それは良かったな」
「ええ」

とりあえずこれで東京に戻れるし、圭史さんの仕事の手を止めなくて済む。
そのことにホッとした。
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