契約シンデレラ
「おじさまにお話があってやって来たのよ」
「そうでしたか」

おじさまというのは圭史さんのお父様で、今は龍ヶ崎建設の会長として経営にもかかわっている。
考えてみれば龍ヶ崎家と公私ともに親しく付き合っている咲奈さんと社内で会うのもそんなに不思議なことではないが、このタイミングだからこそ少しだけ不安がよぎった。

「あの後、おじさまもおばあさまも困っていらしたのよ」
「え?」

ああ、土曜日のことかを思い出すのに数秒かかった。
この週末は色々なことがありすぎて、土曜日のことがはるか昔のような気さえする。

「もう少し礼儀をわきまえるべきだったと思うわ」
「・・・すみません」

確かに、食事会を途中で抜けてしまったのは失礼な態度だったと思うけれど、どちらかというと私は連れ出された方だ。
それでも、つい謝ってしまった。
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