契約シンデレラ
「そう言えば、今日の味噌汁は少し薄味ね」
「え、そう?」

パジャマのまま私が準備した朝食を食べていた理央が首を傾げている。
私も気になってお味噌汁を口にしてみたが、

「そうかなあ?」

確かに少し出汁の味が弱いけれど、塩加減はいつも通りにしたつもりたが・・・
ああ、そうか。
普段から濃い味付けのものを好まない圭史さんの味覚に合わせているうちに、薄味になったのかもしれない。

「フフフ」
意味深な表情で、理央が笑っている。

「何よ」
「別に」

理央が何を言いたいのか、私にも見当はつく。
一文無しになったマレーシアで助けてもらい、行き場がないからマンションに住まわせてもらった。その交換条件のように、恋人役を引き受けた。
全てが仕方なく受け入れてきたことのように言っているけれど、実際は自分の意志で決めたことだ。
そして今の私は、ふたりでの生活に居心地の良ささえ感じている。
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