契約シンデレラ
「床は掃除するから、これを使って」
床に膝をつき割れてしまった食器を集め始めた私に、食堂のスタッフが声をかけタオルを差し出してくれた。
「ありがとうございます、すみません」
せっかく作ってもらった食事を台無しにした上に、掃除までさせてしまって申し訳ない。
そう思いながらも、ドロドロになった服のままではどうすることもできずタオルを受け取った。
「社長に色目を使うことばかり考えているから、つまづくのよ」
「そうね、いい気味」
それは小さな小さなささやき声。
すぐ側にいる私にも、聞き耳を立てなければ聞こえなかっただろう。
でも、私の耳には入って来た。
話しているのは制服を着た女性たち。
確か受付のスタッフで、圭史さんの外出に同行した時や、来客の対応でロビーに行った時に見かけたことがある。
そういえば、今日の朝呼び出してくれたのも彼女だった。
「私、何かしましたか?」
汚れた服のまま、私は女性たちの前に立った。
最初は無視しようと思ったけれど、あまりにもひどい。
元々ウジウジ悩むのは性に合わないし、どうやら言いたいことがあるのだろうと私の方から声をかけた。
騒ぎを大きくするようで申し訳ないけれど、黙ってはいられなかった。
「ヤダ怖い、私たち何もしていないのに・・・」
「そうよ、自分で転んでおいて人のせいにするなんてひどいわ」
今にも泣きそうな顔で声を大きくする女性たちに周囲から同情的な視線が集る。