契約シンデレラ

ヒーローのピンチ

「お疲れさま」
「お、お疲れ様です」

一日外出の予定だった圭史さんが突然戻ってきたのはその日の夕方。
いつもなら連絡があるのに、電話もなくて正直驚いた。
しかし、おそらく昨日から連絡の取れない私に文句を言いたかったのだろうと想像はできる。
その証拠に、社長室に入ると上着を脱ぐこともなく私を睨みつけた。

「家にも帰ってこないし、電話にも出ないし、どれだけ心配したと思うんだ」
「すみません」

昨夜の電話に出なかったのは意図的というよりも疲労による睡魔に勝てなかったのだが、心配させてしまったことに変わりはないだろうと素直に謝った。

「一体どうしたんだよ」

腹立たしげな圭史さんが語気を強めるけれど、不思議なことに怖いとは思わない。
距離をとらなければいけないと頭では理解しているのに、それでも私は圭史さんに会いたいと思っていたから。
だからかな、場違いにも私の顔は少しだけほころんでいる。
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