契約シンデレラ
「心配ならここにいればいいだろう」と言われ、私は口ごもった。
もちろん、私には私の思いがあるのよと言いたかったけれど言えなかった。

「なんで出て行かなくてはいけないんだ?」
「それは・・・」

真剣な目で見つめられ、すぐに返す言葉が見つからない。
そもそも私がここにいる理由がない。
圭史さんとパートナーのふりをするという契約を交わし、たまたまそのタイミングで住むところをなくしていた私は転がり込むようにこのマンションに住み始めた。
もちろんそれは圭史さんのことが信頼できる人だと思ったからだし、私自身ここでの暮らしは快適で幸せだった。しかし、やはりここは私のいるべき場所ではない。

「俺はこれからも一緒にいたいと思うが、晶は違うのか?」

私だってここにいたいわと言ってしまえれば、どんなに楽だろう。
でも、そのことが圭史さんの負担になるのかもしれないと思うと、自分の気持ちだけで突き進むことができない。

「こんな立派なマンションに私なんて分不相応で、やっぱり居心地が悪いんですよ」

私は精一杯意地を張り返事をすると、ごまかすように周囲のゴミを片付け始めた。
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