契約シンデレラ
そっと私の背中に手を回し、頭一つ高い圭史さんの顔が私の肩に乗せられる。
私はされるがままに、その場に立ち尽くした。
肩口から伝わってくる温かさにホッとすると同時に、いつもより荒い圭史さんの息づかいが私の不安を掻き立てる。

「何があったのか、聞いてもいいですか?」

さすがにこのままにはできなくて、声をかけた。
もちろん無理強いして聞き出そうと思ったわけではないが、少しでも力になりたいと思った。

「取引先の情報が外部に漏れたんだ」
「そう、ですか」

そのことについては先週末に真也さんからも聞いていたから、驚くことはない。
でも、圭史さんの様子は明らかにおかしい。
きっと他にも何かある。それは直感にも似た感覚。

「情報管理もできない会社との取引は考え直すなんて言い出した取引先もあって、大騒ぎだ」

困ったもんだよと自虐的に笑う圭史さんの反応がいつもと違う。

「大丈夫ですか?」

私も圭史さんの背中に手を回した。
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