契約シンデレラ
しばらくして、私達は社長室のソファーに並んで座った。

「一言も言い訳しないんだ」
「え?」

一瞬ポカンとして、圭史さんを見た。

「あいつ、みんなに散々責められても堂々としていて、いつもと何ら変わりがない」
「でも、じゃあなぜ」

森山課長は内部情報の漏洩なんてしたんですか?
そう聞きたいのに、言葉が続かない。
それだけ圭史さんの顔が辛そうだった。

「いい訳もしなければ、動機も話さない。ただ、俺のことが嫌いだったんだそうだ」
「そんな・・・」

恵まれた家に生まれた御曹司である圭史さんに妬みを感じる人もいるのだろうと思う。
それもまた圭史さんが持って生まれた運命なのだからしかたがない。
しかし、圭史さんはそのことに言い訳はしない。
すべてをあるがままに受け入れて、自分に与えられた状況でベストを尽くす。
そんな圭史さんの潔さを私は尊敬している。

「よっぽど俺が幸せそうに見えたんだろうな」
「・・・圭史さん」

口惜しそうに言う圭史さんに、私は静かに手を重ねた。
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