契約シンデレラ
「こんな結果になったのに、俺はまだあいつが会社の不利益になることをしたとは信じられない。あいつは誰よりも正義感の強い奴だったから」
「ええ、そうですね」

圭史さんは森山課長を信頼していた。少なくとも私にはそう見えた。
あまり感情の起伏を見せる方ではない森山課長だったけれど、圭史さんに対しては遠慮なくものを言い本音で接しているようだった。
だからこそ、圭史さんもショックのはずだ。

「警察沙汰になるんですか?」

なんだか森山課長が犯罪者になるのが想像できなくて聞いてしまった。

「そうだな、このままってわけにはいかないだろう」

辛そうな圭史さんの表情から、悔しさがにじみ出る。
本当なら穏便に解決したいと思っているのだろう。
でも、ここまで騒ぎが大きくなればなんだかの対処をしなくてはいけない。

「森山には会社を辞めてもらう。その上で今回の件を処理して、あとはうちの顧問弁護士にゆだねるつもりだ」
「それが、いいですね」

今回の騒ぎが収まれば、状況も変わってくるのかもしれない。

「俺としてはできるだけ穏便に済ませたいと思うが、晶はそれでいいか?」
「え、私ですか?」
なぜ?と首を傾げた。

「晶は個人情報漏洩の犯人にされかけたんだぞ」
「ああ、そうでした」

ということは、社員の個人情報漏洩も森山課長の仕業だったんだ。
そう思うと、ちょっとショックだな。
< 179 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop