契約シンデレラ
ホテルで朝食を済ませ、向かったのはマレーシアの王宮。
そこには現地の要人たちが待ち構えていて、煌びやかな応接室に案内された。
もちろん緊張はしたけれど、私も森山さんと共に同席した。

圭史さんの年齢は32歳だと名前を教えてもらった時に聞いた。
今は日本のゼネコンで働いているらしい。とは言え海外に秘書同伴で来るくらいだからかなりのセレブなのだろうけれど、あまり細かいことまでは聞けなかった。
その圭史さんに秘書として帯同している森山さんは当然部下ということになるのだが、年齢的にも同じくらいに見える。おそらく30代前半。圭史さん同様身長は180センチ超えで、銀縁の眼鏡が印象的ないかにもできるビジネスマンという印象の人だ。
とは言え圭史さんに対しては敬語を使い部下としての礼を崩さない森山さんは優秀な秘書にも見える。

「あなたは、現地の言葉がわかりますか?」
応接室に入りお茶の準備が整うまでの時間に、森山さんに尋ねられた。

「いえ、ぜんぜん」
さすがに数カ月滞在したからなんとなく意味が分かることもあるけれど、意思の疎通ができたり、ましてやビジネスの場で使えるレベルではない。

「そうですか」

じゃあ何でここまでついてきたのかと言いたそうな森山さん。
もちろん私だって、何しに来たのだろうとは思っている。
しかし・・・

「晶はそこにいればいい。何か用事があれば言うから」
森山さん思いがわかったのか、圭史さんが言ってくれた。

「わかりました」
森山さんは反論することはなく口を閉ざした。
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