契約シンデレラ
「晶が許せないって言うなら、すぐに警察て訴えてもいい」
「そんなこと、私は望みません」

いきなり旅先で出会った私に対して森山課長がいい印象を持っていないのもわかっていたし、私にも森山課長に対する苦手意識があった。
だからと言って、決して嫌いだったわけではない。
仕事上では何度も助けられたし、圭史さんにとっては大切なブレーンだったと認識している。そんな人を、わざわざ貶めようとは思わない。

「じゃあ、森山のことは一旦忘れてくれるか?」
「はい」

私よりもつらいはずの圭史さんがそう決めたのだから、私に異論はない。

「明日からは取引先回りで忙しくなるがよろしく頼むぞ」
「わかりました。きっちりスケジュール管理はしますので、お任せください」

ポンと胸を叩いて笑ってみせる。
せめてこんな時くらいはと、私はできるだけ明るい顔をした。
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