契約シンデレラ
「父は私と圭史さんの結婚を望んでいるの。だからこそ、忙しい時間を割いてまで、圭史さんのために動くのよ」
「・・・ええ」

いくらビジネスの現場に疎い私だって、ここまで援助してくださる姿を見ればおおよその察しはつく。
ただ、今は個人的な感情にかまっていたれる状況ではなかったから、気づかないふりをしていた。
実際咲奈さんのお父様が助力してくださらなければ、事態はもっともっと悪くなっていただろう。

「ねえ晶さん」
「はい」

真剣な声で呼ばれ、私は顔を上げた。

「圭史さんと龍ヶ崎建設の未来を思うなら、消えてくださらない?」
「それは・・・」
「わかっているはずよ。あなたを選べば、圭史さんは多くのものを失うことになるわ。すべてあなたのせいでね」

たった数日前、私はずっと圭史さんと側にいようと決心した。
たとえすべてを失っても、ふたりでいたいと心から思っていた。
しかし、現実はそう甘くはないらしい。

「晶さんは、圭史さんを不幸にしたいの?」
「いいえ」

不思議なくらいはっきりと答えたものの、結論の出ることのない討論に私は小さくため息をついた。
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