契約シンデレラ
「賢明な判断を期待しているわ」

しばらく社長室にとどまった後、咲奈さんは捨て台詞を残して帰って行った。
残された私は脱力してしまい、社長秘書室の隣接する事務室で自分のデスクに突っ伏した。
正直、答えは出ているように思う。
どうあがいても、私では圭史さんの力にはなれないし、今回の危機だって乗り越えることができないかもしれない。
そうなれば方法は一つしかない。

「どうした晶?」

いきなりドアが開き、真也さんが顔を覗かせたことに驚いて立ちあがった。

「真也さん、どうしたの?」

今まで医務室以外で会ったことなんてなかったのに。

「晶のことが気になって覗きに来た」
「そう、ありがとう」

さすが真也さんだなと感心しながら、私は笑顔でお礼を言った。

「大丈夫か?」
「・・・ええ」

いくら強がっても、真也さんにはすべてお見通しだろう。
それでも今は笑っていたい。

「例の話、本気で考えないか?」
「え?」

例の話とは先日会った時に聞いた、大学病院へ就職しないかという話だろう。

「このままじゃ、晶が辛くなるだけだぞ」
「それは・・・」

あまりにも正論で、私は反論することができなかった。
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