契約シンデレラ
「真也さんは、心配で様子を見に来てくれたんです」

圭史さんの鋭い視線を感じて言葉にしてみるけれど、張り詰めたような空気は変わらない。
私も圭史さんの不機嫌を感じ取り、どうすることもできなかった。

「晶、例の話考えておいてくれ」
「はい」
「社長、留守の間におじゃまして失礼しました」
「ああ」

真也さんはそのまま部屋を出て行った。
そして真也さんが去ったあと、圭史さんは何も言わずに社長室に入って行き、私はデスクで仕事を再開した。

何度か声追をかけようかと思ったし、咲奈さんがいらしたことを話そうともした。
でも今口を開けば心とは反対の言葉が飛び出しそうでできなかった。

「はあー」
圭史さんに気づかれないように、小さなため息を一つ。

私と圭史さんの距離は、どんなにあがいても埋まることがないのかもしれない。
近づこうとすればするだけ遠くなっていく気がする。
やっぱり無理なのかな。
私はふと、そんなことを考えていた。
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