契約シンデレラ
子供の頃から欲しいものは何でも手に入れてきた気がする。
虚栄心の強い母や龍ケ崎家の財力に集まってくる大人たちに囲まれて、思えばかわいげのない子供だった。
もちろん、その環境を不幸だと思った事は無い。
ただ、学校でゲームや高そうなおもちゃを自慢する同級生たちよりも、その当時通っていたスイミングスクールで会う仲間たちとの時間の方が好きだった。
小学生から高校卒業まで続けた水泳は、俺が唯一母から離れられる時間。
明るくて楽しくて、共に競い合う仲間たちが俺は大好きだった。
晶といると、なぜかその頃のことをよく思い出す。

プププ プププ
メールの受信。
母さんからだ。

『会社のほうはどうなの?お父様も今日アメリカから戻っていらっしゃるから、夜には顔を出しなさい』

今回の騒動では母もずいぶんと動いてくれている。
何しろ母の実家は日本を代表する財閥の創業家
正直言えば、俺なんかよりもよっぽど強力なコネクションを母は持っている。

『今夜、顔を出します』

いつもなら素直に言うこと聞くなんて事はあまりないが、今は少々が分が悪い。
たとえ母や母の実家に頭を下げてでも、俺は龍ケ崎建設を守っていかなくてはいけないし、その覚悟も持っているつもりだ。
しかし、晶の事だけは話が別だ。
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