契約シンデレラ
「いらっしゃい」

いくつかの面会や会議が終わり、実家に帰ったのは日付が変わるギリギリだった。
出迎えてくれたのは母だが、10日ほど前からアメリカに出かけていて夕方に帰国した父も俺のことを待っていてくれた。

「父さん、心配かけてすみません。向こうの取引先も何件か回ってもらったようでありがとうございます」

本当は新事業の下見を兼ねたアメリカ出張であったが、今回の件を踏まえ、父は日程変更して取引先回りでしてきてくれた。
おかげでアメリカでの取引は何とか死守できたようだ。

「たまたま向こうにいてよかったよ。それにしても、森山が犯人だったとは驚いた」

もともと父の秘書をしていた森山の才能を見抜き、俺に付けてくれたのは父だけに、衝撃を隠せない様子だ。
もちろん森山を信頼し共に仕事をしてきた俺は、いまだに信じられない。
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