契約シンデレラ
「とりあえず国内の取引先にも私が顔を出すつもりだ。古くからの取引先も多いから、そのほうがいいだろう」
「すみません、父さん」

社長なんて言いながらいまだに父の力を借りるなんて情けない。
しかし今は会社を守っていくことが1番。
それこそが勤める従業員やその家族たちの生活を守ることでもある。

「大丈夫だ、取引先の多くはお前のことを評価している」
「はい」

財閥のお嬢様である母のキャラクターが強すぎて影に隠れてしまいそうな控えめな父だが、経営者としてもとても優秀な人だ。
穏やかで現実的で、大きなバクチを打つ事もなく着実に会社を強く大きく育ててきた父。
そんな経営者になりたいと俺は思っている。

「お前の信じた道を行きなさい。父さん母さんもお前のことを信じている」

昔から父に怒られた事は無い。
俺がどんなことをしても、父はいつも俺のことを信じてくれた。

「精一杯がんばります」

俺は一旦立ち上がり、父に向かって頭を下げた
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