契約シンデレラ
「本当にウエディングドレスだけでいいの?」
「ええ、結婚式の一日をウエディングドレスで過ごすのが夢だったんです」
「そう、ならいいけれど」

何着もの着物やカクテルドレスを用意しようとしていたお母様は意外そうな顔だけれど、私はそうしたいのですと主張した。
その昔、お金のなかった母はウエディングドレスを借りて写真だけをとったのだそうだ。
結婚式は自分のウエディングドレスを着て一日を過ごしたかったと何度言っていた。
だから、私は自分のお気に入りのウエディングドレスで一日を過ごしたいと思っていた。

「せっかくだから、自分の気に入ったドレスになさいね」
「はい」

圭史さんからは気の強い変わり者の母だと聞かされていたが、こうして何度もお話をしてみると、真っすぐで正直でチャーミングな方だと思える。
長い人生の中ではぶつかることもあるかもしれないけれど、できるだけ理解しあって仲良くやっていこうと思っている。
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