契約シンデレラ
「それだけしか食べないの?」
「ええ」

龍ヶ崎家行きつけのショップに行き、昼食用に用意してもらったサンドイッチを二切れだけ食べて食事を終えた私を、お母様が不思議そうに見ている。

「晶さん、あなたもしかして」
「あの・・・それは・・・」
「母さん、晶をいじめないでください」

返答に困っていた私の背後から、圭史さんの声が聞こえてきた。

「あら、あなたも来たのね」
「ええ、ちょうど時間が取れたので」

午後の会議が早く終われば顔を出すよとは言っていた圭史さんだけれど、こんなに早く来られるとは思ってもみなかった。

「ところで、晶さんのことだけれど、仕事が忙しすぎるんじゃないの?随分食欲も落ちているみたいだし」
「あの、それは・・・」
思わず私の方が口を挟んでしまった。

「実は近いうちに話をしようと思っていたのですが、晶は妊娠しているんです」

圭史さんが少し照れ臭そうにうちあけてくれる。
一方初めて聞いたお母様は、驚いた顔をして私を振り向いた。

「本当なの?」
「ええ。黙っていてすみません」

やはり、お母様に唖然とされてしまった。
もちろん、ずっと黙っているつもりではなかった。
圭史さんとも話し合い、近いうちに2人で報告に行くつもりだった。
きっと喜んでは下さるだろうけれど、その先の反応が気がかりでもう少し落ち着いてからと言いながら時間が過ぎていたのだ。
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