契約シンデレラ
「晶、大丈夫か？」
「ええ」

圭史さんがお母様に説明してくれたものの納得してもらうのは大変で、買い物の間中声をかけられて夕方になりやっと帰宅した。
仕事を辞めなさいとか、家事は家政婦を雇ってとか、とにかく私の体調を心配してくださるお母様。
もちろんそのことはありがたい限りだけれど、妊娠は病気ではないのだからできるだけ普通にすごしたいと思う私は困ってしまった。

「母さんには俺が言っておくから、気にするな」
「そんな・・・私は、大丈夫ですから」

私の体を心配してくださるお母様の気持ちは本当にありがたい。
もちろん多少過保護な感はあるが、幸せな気持ちに嘘はない。

「無理しなくてもいいからな、何かあれば俺に言ってくれ」
「はい」

偶然から始まった出会いから、私の運命は大きく動き出した。
お金も仕事も住む所さえもなかった私にすべてを与えてくれたのは圭史さんだった。
それはまさにシンデレラ物語なのだろう。

「そう言えば、理央ちゃんの作品がヒットしているそうだな」
「ええ、今度映画化されるそうです」

圭史さんとの出会いで運命が変わったのは私一人ではない。
誰よりも近くで私と圭史さんの出会いを見守っていた理央も、新作を描いていた。
タイトルもそのまま『シンデレラ物語』。
天涯孤独で貧しい女の子が王子様と出会いプリンセスになるお話だ。

「完成したらぜひ見たいな」
「もう、圭史さんったら」

公に理央と私の関係が公表されているわけではないが、私たちがモデルのあるのは明らかで、そう思うとやはり恥ずかしい。
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