契約シンデレラ
「今度理央ちゃんを呼んで食事でもしようか?」
「ええ、話してみます」

純粋に好奇心からなのか、作品のネタにしようと思っているのかはわからないが、理央は私と圭史さんのことをとても聞きたがるから、きっと喜ぶことだろう。

「ああ、でも・・・海田先生は呼ぶなよ」
「え?」
驚いて圭史さんを振り返った。

真也さんが私にとって初恋の人だと圭史さんも知っている。
龍ヶ崎建設に入社した経緯から,親しくしているのも事実。
ただ、そこに恋愛感情はないのだが・・・

「顔を合わせるたびに、『晶は元気にしていますか?』って聞くんだぞ。・・・面白くない」
「そんな・・・」

プイっと反対を向いた圭史さんがなんだかかわいい。
そして、こんな瞬間に愛されていることを実感できてうれしくもある。

「そう言えば、咲奈もイギリスに着いたって山口社長に聞いたぞ」
「そうですか」

圭史さんのことを好きだと言っていた咲奈さんは、山口社長もすすめもあってロンドンへ留学することになった。
出発前には私も会ったけれど、吹っ切れたような清々しい表情だった。

「咲奈にもいい出会いがあるといいな」
「ええ」
「晶、俺達も幸せになろうな」
「はい」

物語の『シンデレラ』は王子様とシンデレラが結ばれて終わるけれど、実際の生活はまだ続く。
この先の長い人生を、私は圭史さんと共に歩んでいくのだと決心している。
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