契約シンデレラ
「あの・・・これっていつまで続くのでしょうか?」
いい加減辟易して女性に声をかけたのに、
「どれも素敵で選びきれないんですよ」
なぜかニコニコと笑顔を見せるのは圭史さんが良いお客だからだろうかと、今の私には思える。

「さあ、こちらはいかがですか?」

約一時間以上続いた試着の末に渡されたブラックのオフショルダードレスを着て、私はまた圭史さんの前に立った。
正直黒なんて私のイメージではないなと思いながら、半分投げやりに袖を通した一着。
しかし、
「うん、いいね」
「え?」
予想外の反応に、私の方が驚いた。

圭史さんがいいと言ってくれたのは、生地の光沢が美しいロングドレス。
首元から肩口までが大きく開いているものの、胸元にあしらわれたレースが上品でいやらしさはない。
ハイウエストの切り返しから繋がるスカート部分も程よいボリュームで、全体を通してエレガントな印象だ。

「確かに、お嬢さんの清楚な感じが引き立ちますね」

きっとお世辞だろうけれど、案内してくれた女性も「素敵です」と褒めてくれる。
これで何とか試着が終わると、私はそのことにホッとした。
そして、疲れてしまった私はすぐにでもドレスを脱ごうとしたけれど、

「一緒に靴やバックもお願いします」

圭史さんの一言で、私は再び腕をとられた。
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