契約シンデレラ
「うん、よく似合うね」
鏡に映る私を圭史さんが褒めてくれる。

「ありがとうございます」

とりあえず圭史さんのOKが出たことで私もホッとした。
何しろ私は圭史さんの依頼でこんな格好をしているのだから。

「それじゃあ最後の仕上げだ。ちょっと後ろを向いてくれる?」
「え、後ろですか?」
意味が分からないながらも、私は言われた通りに背中を向けた。

「これは借り物だから、失くさないでくれよ」

少しからかうような声で言われた次の瞬間、首元に感じた冷たい温度。
反射的に顔を上げ鏡を見ると、大きく開いたドレスの胸元に光る何重にも連なった宝石。
ひとつひとつは透き通るように透明で何の色も持たないのに、周囲の光を反射してキラキラと輝いて見える。これは・・・たぶんダイヤモンドだ。

「圭史さん、これって・・・」
私は驚きのあまり言葉を失った。

「大丈夫。心配しなくてもちゃんと保険は掛けてあるから」
「いえ、そうではなくて・・・」

もう何と言っていいのかわからない。
もちろん、圭史さんのことをただのサラリーマンだとは思っていたわけではないけれど、これは想像のはるか上を行く。
私はそれ以上のことを聞くのが怖くなり、結局口を閉ざしてしまった。
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