契約シンデレラ
***Side圭史
昔からの付き合いで参加した慈善団体のパーティ―。
俺としては何の義理立てがある訳でもないが、たまたまマレーシアに来ていたこともあって断ることができなかった。
ただ海外のパーティーに参加するには同伴者が必要になる訳で、そのことが少し気になっていた。
下手に一人で参加すればすぐに見合い話がきそうだし、秘書課の女性を同行させるにはマレーシアは遠すぎる。
そこでたまたま見つけたのが彼女だった。
正直誰でもよかった。
最低限のマナーと日常的な英会話ができて、過度に目立つことなく隣にいてくれる女性が欲しかっただけだ。
しかし・・・
「一体何を考えているんだか」
パーティーが始まる直前。
なかなか戻ってこない彼女を心配している俺の元に届いたメッセージには『気分が優れませんので先に戻ります』と書いてあった。
それを見た瞬間にはもちろん呆れたが、不思議と怒りの気持ちはなかった。
お互いきちんとした素性を知ることもなく行き当たりばったりで契約してしまった雇用関係ならこういう結果になったとしても仕方がないし、むしろ俺の危機管理の甘さにも思えた。
だから彼女の後を追うこともなく、俺はそのままパーティーに参加した。