契約シンデレラ
そして夜になり、俺はホテルに戻った。
当然彼女が帰っているものと思っていたのだが・・・

「あれ?」
ホテルの部屋には彼女の姿はなかった。

一通り部屋の中を見て回ったが、彼女の使っていた寝室もきれいに片づけられていて、一階のリビングには今日のパーティーで着ていたドレスや宝石など、俺が用意してやったものがすべて揃えて置かれていた。
そして、テーブルの上に残されたメモには『突然いなくなってごめんなさい。ホテルで出会った嫌な客に絡まれて騒ぎになりそうなので逃げました。これ以上私が側にいても迷惑をかけるだけのように思うので、出て行きます』のメモがあり、残り2日分のアルバイト代として4万円の返金が置かれていた。
そもそも財布もスマホも持たない彼女に俺が渡したのは現金の8万円で、そのうちの4万を返したのでは日本への旅費にもならないはずだ。どうやら帰りのチケットは持って行ったみたいだから、チケット変更すれば早めに日本へ帰ることもできなくはないが、どちらにしても金はあったに越したことはない。

「本当に、律儀な奴だな」

借りていた宝石は別として、服や靴に至るまで彼女のために買ってやった女性ものの衣服をわざわざ返されても困るのだがと思いながら、それもまた彼女らしくてつい笑いそうになった。
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