契約シンデレラ
まあ考えてみれば、出会った時から彼女は面白かった。
マレーシアのリゾートに立つ高級ホテルは日本を代表する財閥である一条コンツェルンの系列ホテル。俺自身も一条コンツェルンとは縁戚関係にあり、時間に余裕があれば少し足を延ばしてでも利用していた。
そこのラウンジでウエイトレスとして働いていたのが彼女だった。
童顔で子供のように見えながら、明るくて元気はつらつ。
客の顔を覚えるのも早いようで、何度か通っているうちに声をかけてくれるようにもなっていた。
そんな時、食事を終えてラウンジを出ようとした俺の耳に飛び込んできた日本人男性の怒号。
一体何が起きたのだろうと思って振り返った時にはホテルのスタッフが集まっていて、トラブルがあったのはわかったものの、彼女が巻き込まれ辞めさせられたと知ったのはそれから数日たってからだった。
秘書の幹人に経緯を調べさせ彼女も被害者のようだとわかったものの、直接経営にかかわっているホテルでもない俺にはどうすることもできず、かわいそうなことをしたなと思っていて時にたまたま街で見かけた彼女。
スリに会い財布もスマホもなくしたのだと聞いてその無防備さに呆れたし、困っているくせに『お金は借りたくありません』という言葉に驚いた。
俺はそんな彼女に興味がわいて、『アルバイトをしないか?』と誘っていた。
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