契約シンデレラ
「それで、盗まれたものはないんですね?」
「ああ」
夜になり打ち合わせのためホテルまでやって来た幹人が呆れたように俺を見ている。
初めから素性のはっきりしない彼女を同行させることに、幹人は反対だった。
きっと今だって『だから言ったじゃないですか』と言いたいに決まっている。
しかし、それをあえて口にしないのも幹人らしい。
「晶のことは他言無用だぞ」
「ええ、承知しております。しかし、すでに奥様に耳には入っているものと思いますが?」
「それでも、知らぬ存ぜぬで通してくれ」
「承知しました」
頭のいい幹人のことだから余計なことは言わないだろうし、実際幹人は晶のことを何も知らないはずだ。
まあ俺自身晶の名前と年齢くらいしか知らないんだからそれも当然なのだが、今こうなってみるとお互いに素性を明かさなくてよかったのかもしれないな。
「ただ、奥様がそれで引き下がるとは思えませんが?」
「ああ、わかっている」
お嬢様育ちの家の母はやたらとプライドが高く、一人息子である俺のことを溺愛している。
その分俺の行動には過干渉だし、気に入らない人間は俺の周りから排除しようとさえする。
彼女のことが知れれば黙っているはずがない。
「ああ」
夜になり打ち合わせのためホテルまでやって来た幹人が呆れたように俺を見ている。
初めから素性のはっきりしない彼女を同行させることに、幹人は反対だった。
きっと今だって『だから言ったじゃないですか』と言いたいに決まっている。
しかし、それをあえて口にしないのも幹人らしい。
「晶のことは他言無用だぞ」
「ええ、承知しております。しかし、すでに奥様に耳には入っているものと思いますが?」
「それでも、知らぬ存ぜぬで通してくれ」
「承知しました」
頭のいい幹人のことだから余計なことは言わないだろうし、実際幹人は晶のことを何も知らないはずだ。
まあ俺自身晶の名前と年齢くらいしか知らないんだからそれも当然なのだが、今こうなってみるとお互いに素性を明かさなくてよかったのかもしれないな。
「ただ、奥様がそれで引き下がるとは思えませんが?」
「ああ、わかっている」
お嬢様育ちの家の母はやたらとプライドが高く、一人息子である俺のことを溺愛している。
その分俺の行動には過干渉だし、気に入らない人間は俺の周りから排除しようとさえする。
彼女のことが知れれば黙っているはずがない。