契約シンデレラ
圭史さんと一緒に出席したパーティーの日、一人ホテルに帰った私は荷物を整理するとすぐに空港へと向かった。
ちょうどいい時間に飛行機があるのかも、圭史さんからもらったチケットで乗れるのかもわからなかったけれど、とにかく空港へ向かうことしかできなかった。

「ファーストクラスで帰って来たなんて、凄すぎるわね」
私が持ち帰ったアメニティーやパジャマを見ながら理央も呆れ顔。

「うん、そうだね」

現地の空港に着きカウンターでチケットの変更手続きをしようとした時点で、私は圭史さんが用意していたのがファーストクラスの席だと知った。
さすがに怖くて金額までは確認できなかったけれど、買えば少なくとも何十万円単位の金額だと思う。

「ファーストクラスって、ものすごいごちそうが出るんでしょ?」
「・・・うん」
確かに、キャビアやフォアグラなどの今まで見たこともない料理が並んでいた。

「いいなあ」
「そうかなあ・・・」
そんなことはないと思うけれど。

最初、私はチケットを売ってお金にしようかと考えた。
売ったお金で改めてエコノミーのチケットを購入してもかなりの現金が残るはずだし、その方が日本に帰ってからも助かるのはわかっていた。
しかし、それはズルイことのような気がしてできなかった。

「まあ、お互い損な性格ってことよね」
「そうだね」

お金を持たないくせにファーストクラスで帰国するからには何か事情があるのだと理央も気が付いたようだ。
それでも、私が言わない限り細かく詮索して来ないのもまた理央らしい。
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