契約シンデレラ
何かを待ち構えるように男女数人ずつが正面玄関前に並んだ。
女性たちは皆きれい春色のスーツで、華やかな印象。
男性たちはビシッとスーツを着たいかにもビジネスマン風。
少しバタバタと慌てたような印象から、予定していた来客のお出迎えという感じではなさそう。
そして、ほどなくして入って来た黒塗りの車。
待ち構えていた男性の1人が後部座席のドアを開け、「おかえりなさいませ」と女性たちが頭を下げる。
どうやらお偉いさんの帰社らしいと思って見つめていた私は、次の瞬間固まった。

「う、嘘」

車から降りてきたのは、圭史さんだった。
そしてその隣には森山さんの姿もある。
現れた圭史さんの姿を見てまず感じたのは懐かしさ、そして次に浮かんだのは見つかってはまずいとの思い。
私は数歩後ずさりして柱の陰に入った。
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