契約シンデレラ
「久しぶりだね」
わざわざ私に歩み寄り、ニッコリと見下ろす圭史さんの笑顔が少し怖い。

「マレーシアではすみませんでした」

色々と後ろめたいところのある私は、とりあえず頭を下げるしかない。

「無事に帰られたようだね？」
「ええ、おかげさまで」
「ところで、あの時の契約はまだ有効だよね？」
「え？」

一瞬何を言われたのかがわからずポカンとしたものの、マレーシアで交わした「アルバイトをしないか？」という話のことだと分かった。
確かに、初めから４日間という約束で、実際には３日目の途中で私は逃げ出した。
差額の返金はしたものの、まだ契約は残っているはずだと言われれば言い逃れできない。

「少し、俺に付き合ってくれ」
耳元に顔を寄せささやくように言われた言葉に、
「はい」
私は素直にうなずいた。
そのことがその後の私の生活を大きく左右するとは、想像もしていなかった。

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