契約シンデレラ
「俺に迷惑をかけないようにと思ったんだろう?」
「え、ええ。そうです」

ジッと私を見据えた圭史さんに問われ、素直にうなずく。
確かに、私があの場にいれば騒ぎが大きくなると思って逃げ出した。

「見くびってもらっては困る。あいつが少々騒いだくらいで俺はビクともしないし、逆にあいつをたたき出してやることもできた」

余裕たっぷりに話す圭史さんの言葉に嘘は感じない。
きっと、私に絡んできた男性よりも圭史さんの方が人望も社会的信用もあるのだろう。
今こうして龍ヶ崎建設の社長室まで来て、私はそのことを実感している。

「すみませんでした」
私は圭史さんに謝った。

お金をもらって契約をしたのに約束を果たすこともなく逃げ出したのは私が悪いし、ホテル代や飛行機代を返せと言われても仕方がない状況だ。

「ホテル代や飛行機代もお返しするべきだとは思うのですが、今はまだ」
「バカ、そんなものいらない」
私に歩み寄り息がかかりそうな距離まで顔を寄せた圭史さんが睨んでいる。
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