契約シンデレラ
「金を返えせと、俺が言ったか?」
「いいえ。でも・・・」

私は圭史さんに雇われていたのだから、約束を果たせなかった以上お返しするのが筋だと思う。

「そもそも、買ってやった女性の物の衣服を残して行かれても困るんだ」
「そうかもしれませんが」
「金に困っていたんなら持って行って売ることもできたはずだろう」

不機嫌そうにまくしたてる圭史さんは何を考えているんだと呆れ顔。
しかし、私にだってプライドはある。

「とにかく、逃げ出したことは謝ります。申し訳ありませんでした」

私はソファーから立ち上がり、きちんと頭を下げた。
そして、これ以上長居するべきではないように感じて社長室を出て行こうとしたのだが、
「待て、話は終わっていない」
圭史さんに止められてしまった。

「まだ何か?」
さすがにこれ以上文句を言われる覚えはないが・・・
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