契約シンデレラ
子供の頃から、理央は私の性格がよくわかっている。
お互いに家族よりも長く一緒にいたのだから当たり前かもしれないけれど、それだけに嘘は通用しない。
今回のことだって、マレーシアから一方的に逃げ出した後ろめたさがあり圭史さんの申し出を断り切れなかったのは間違いないが、ただそれだけの理由で引き受けたわけではない。
今の私には住む所も仕事もお金もなく、安定した仕事に就きたい気持ちは強い。
父さんのこともあってためらいはあるものの、龍ヶ崎建設ほどの大企業に就職できるのはうれしい。
その上、圭史さんの依頼に対する報酬は別に出すと言ってくれるのだから、私にとってこれ以上の条件はない。
もちろん、圭史さんのパートナーとして人前に出れば色々とめんどくさいこともあるだろうし、マレーシアの時のように絡まれることもないとは限らない。
それでも、放浪中の父以外身寄りのない私には何も失うものもない。
ただ
「真也さんには言わないでね」
それだけは理央にお願いしたい。
「わかったわ。晶も何かあったらすぐ私に知らせてよ」
「はいはい」

嬉々として目を輝かせる理央に少し不安を感じながら、私は龍ヶ崎建設へ勤務する決心をしていた。
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