契約シンデレラ
「真也さん、今日は龍ヶ崎建設で勤務なの?」
「ああ、月曜日にはできるだけ顔を出すことにしているんだ」
「そうなのね」

産業医とはいえ月に数回の非常勤勤務の為、私と真也さんが顔を合わすと機会はそう多くはないはずだ。
当然黙っていれば圭史さんとのことも知られるはずがないと、私は思っている。

「配属先は決まったのか?」
「ええ。一応秘書課だって聞いているけれど・・・」
「へえー、そうか」
やはり、真也さんは訝しげな顔になった。

圭史さんに再会して必要な時にはパートナーとして同伴する約束をし、その後龍ヶ崎建設への就職が決まった時点で秘書課に配属になると知らされた。
真也さんは医務室が忙しいときの応援看護師として総務課での勤務を要望していたようだが、そうはならなかったようだ。

「まあ、医務室の人員不足は変わらないから、何かあれば応援を頼むよ」
「ええ、私でよければお手伝いします」

秘書課の所属とはいえ実務経験のない私に何ができるわけでもない。
きっと医務室の手伝いをするくらいの時間はあるのだろうとこの時の私は思っていた。
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