契約シンデレラ
コソコソ、ザワザワ。
エレベーター前に立った私の背中に感じる冷たい視線と囁き。
初めは気のせいかなとも思ったけれど、行き交う人たちは間違いなく私を見ている。

ん？
どうやら、私は何かまずいことをしたらしいと気が付いた。

周囲を見るとエレベーターの前に立っているのは私だけで、皆足早に奥のエレベーターに向かって行く。
もしかしてこれは社員用のエレベーターではないのかもしれない。
そう言えば随分目立つ場所にあるし装飾も豪華で・・・

「ヤダ、間違えたみたい」
気が付いた以上はここから速やかに離れるべきだろうと、私は身を返した。
その時、
「大丈夫だ、間違ってはいない」
聞こえてきたのは圭史さんの声。

「いや、でも・・・」
「いいから乗れ」

その場から立ち去ろうと後ずさりした私を押して、圭史さんはエレベーターに入ってしまった。
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