契約シンデレラ
「これって私が乗ってはまずかったんですよね?」
エレベーターは動き出したものの、さすがに不安になって圭史さんに尋ねた。

外から見ているとよくわからなかったけれど、エレベーターの中も豪華で明らかに社員用には見えない。
どうやら私は間違えてしまったようだ。

「気にすることはない。役員エレベーターだろうと空いていれば使えばいいさ」
「でも・・・」

圭史さんはそう言うけれど、重役でもない社員が乗っていればきっと目立つに決まっているから、明日からは社員用のエレベーターを使った方がよさそうだ。

「それにしても地味だな」
顎に手を当て首をひねりながら、私の全身を見ている圭史さん。

「そうですか?持っているスーツが大学時代に買った就活用の物しかなくて・・・」

そもそも荷物はスーツケース一つに入る程度しかない私が、オシャレなスーツなんて持っているはずもないし、もちろん購入する余裕もない。
とはいえ会社勤めをしたことのない理央もスーツなど持ってはいなくて、手持ちのリクルートスーツを着てくるしかなかった。

「まあいい。後で考えよう」
「・・・はい」

もしかしたらスーツを新調しなくてはいけないかもしれないな。
残り数千円になったお財布の中身を思い出しながら、私は一人肩を落とした。
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