契約シンデレラ
「何だ、不機嫌そうだな」

帰りの車に乗り込んだものの、黙り込んでしまった私の顔を圭史さんが覗き込む
「いえ、別に」
「嘘つけ。思い切り顔に出ているぞ」
「・・・すみません」

上司に対しての不満が顔に出てしまうなんて、秘書して失格ってことだと思う。
ただそれを言うならば、私なんかを秘書課に配属しようとする方が間違っている気もする。

「そう言えば、海田先生と知り合いだったんだな?」
「え、ええ。子供の頃からの知り合いなんです」
いきなり話が変わって、びっくりした。

「へー」
なぜだろう、圭史さんの面白くなさそうな顔。

「何か、まずかったですか?」

別に真也さんとの関係を隠していたわけではない。
ただ話す機会がなかっただけで・・・

「いや、なんでもない」
「そうですか」

秘書課で圭史さん担当の秘書見習いとなった私は、同時に医務室の業務もサポートするようにと森山課長から言われている。
どうやら医務室の人員不足は本当らしく、真也さんのたっての希望で人手が足りないときには看護師として医務室の応援に入ることになる。

「君が看護師だったと聞いて驚いただけだ」
「・・・そうですか」

看護師らしくないと言われたようで気に入らないけれど、今は黙っていたほうがよさそうだ。
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