契約シンデレラ
「それで、今夜もネットカフェか?」
「ええ、後数日は泊る予定です」

理央の締め切りを過ぎればアパートに戻れるし、給料がでれば自分でアパートを借りることもできる。
どちらにしてもあと数日の我慢だ。

「バカな奴だな」

一通り私の話を聞いて呆れたような顔になった圭史さんが、私を見ている。

「どうせ」
私はバカですよ。
でも、今の私には理央以外頼れる人はいない。
圭史さんのように恵まれた人にはわからないだろうけれど、私には帰る家がないのだから。

「それならそうと俺に言えよ」
「言える訳ないじゃないですか」

色々と経緯はあるにしたって、圭史さんは大企業の社長で私は一社員。
立場も境遇も違いすぎる。

「言いたいことはあるが、まずは飯にしよう。何がいい?」
「私は何でも・・・」
「じゃあ、家に来るか?ケータリングで何でも頼んでやるぞ」
「ええ、いいですよ」

なぜそう答えたのか、私にもわからない。
ただ漠然と、人目を避ける必要があるのだろうなと感じた。
この時、不思議なことに圭史さんへの警戒心はなかった。
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