契約シンデレラ
「それで、例の約束のことなんだが」
「ああ・・・はい」

注文してもらった中華がリビングのテーブルに並び多少小腹が満たされたところで、圭史さんが切り出した。
例の約束とは、きっとパートナーとになると約束したことだろう。

「母が晶をランチに誘いたと言っているんだ。同席してもらえるか?」
「ええ、まあ」

約束した以上は同席するけれど、相手がお母様というのが気になる。
そもそも圭史さんとの約束は、対外的にパートナーが必要な場に出るときに同伴してほしいというものだった。
お母様との食事に同席するのとは少し意味合いが違う気がする。

「ちなみに、それは圭史さんの女友達という立場でいいんですよね?」

そこのところをはっきりさせておかないと、うまく話を合わせることもできない。

「ううーん、ガールフレンドってことで」
「それって、恋人ってことですか?」
「うん、できればそういう風に振る舞ってほしい」

私の認識や詰めが甘かったと言われれば言い訳はできないが、お母様の前でパートナーだと言われた時点で想定しておくべき話だったのかもしれない。
それでも、
「私、嘘はつきたくありません」

どんなに貧しくても、生活が苦しくても、嘘をついたりずるいことはしない。
それだけを信念に生きてきた。
だから、お母様をだますようなことはしたくない。
そのことは曲げないぞと、私ははっきりと口にした。
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