契約シンデレラ
「じゃあ、先に行きますね」

おにぎりを頬張りながら、私は出社の用意をする。
残念ながら荷つくりが完成しなかったスーツケースは置いて行くしかなさそうだ。

社長である圭史さんは当然のように迎えの車が来るためゆっくりと支度をすればいいけれど、秘書である私は社長よりも先に出勤する必要がある
簡単に掃除をして一日のスケジュールを把握しておかなければ秘書としての仕事は務まらないし、今日は健康診断の準備のために医務室での勤務を頼まれている。
当然その分の仕事量は増えることになり、忙しい一日になりそうだ。

「同じところに行くのに、別に行く必要があるのか？」
「秘書の私が社長の車で出勤したらおかしいじゃないですか」

わざわざ玄関までついて来て文句を言う圭史さんがかわいいななんて思いながらも、まさか社長である圭史さんと同居していると知られるわけにもいかず、私は電車で行くしかない。

「かまわないだろ、別に」
「そうはいきませんよ。とにかく、行ってきます」

私はマンションを駆け出した。
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